誘蛾灯の囁き

アート音痴・芸術素人が好き勝手やってます。

画家の画集を買うのは無意味か?

とある質問サイトで、「絵画は画集を買っても生の絵ではないわけだし、意味がないのではないか?」という質問をしている人がいた。
実物のみが持つ「アウラ」のない画集を買うのが無意味だというのなら、それでは音楽だって生のライヴ以外のCD音源は聴く価値もないということになってしまうだろう。

自分の好きな絵を死ぬ前に直接全て見るなんて現実的に不可能だ。
現地に赴くには大変な手間と時間と金がいるうえ、一般公開していない個人所有の場合もあるし、海外の美術館が所蔵していて国外に出さない(出せない)場合だってあるわけで。
フレスコ画(壁画)とかどうやって国外に出すんだという話になる。

音楽も、普段はCD音源を聴き、時にライヴに行くように、絵画だって普段は画集やネットの画像を見て、美術館の展示で実物が持つ「アウラ」を感じればいいじゃないかと思う。

実物を見たときの感動は味わえなくても、その画家が作品に込めた愛は、たとえ画集に収められた写真からであろうと伝わるはずだ。

私は目黒の本屋でふと手にとった本で、ヴィジェ=ルブランの、娘を抱いた自画像が載ったページを見たとき、全身に震えが走り、感動と感激で胸がいっぱいになった。

なんて温かい、あふれるほどの愛と、優しさ。親しみ。
見ていて、心が隅々まで温められるような幸せを感じた。
生きていてよかった。そう思わせるほどの幸せなパワーを感じさせる絵だった。
素晴らしい絵とはそういうものだと思う。

画集であれ、ネットの考察ページに載せられている画像であれ、愛が込められた素晴らしい作品が発するパワーとメッセージは妨げられることはない。

もちろん、実物を見れたら良いに越したことはないだろう。
思っていたものよりも小さかったり、大きかったりするその絵の匂い、色、筆の跡。
観る角度によってまた違う表情を感じる楽しみ。
それは実物を見た時のみ味わえる楽しみだ。

そして画集の利点は、混雑した美術館と違って、時間や人の目を気にせずにじっくり鑑賞することができるところだ。
休日自宅でのんびりと好きな飲み物でも飲みながらゆっくり画集を開いたり、落ち込んだ時に開くのだっていい。

「これは!」というお気に入りの画家を見つけたら、是非画集を買って欲しいものだ。